地方移住で本当に生活費は安くなる!?移住後もお金が貯まらない3つのワケ
2022.05.17
  • ライフスタイル
  • 編集部コラム

地方移住と聞くと「生活費が安いのが魅力だな」と考える方が多いのではないでしょうか?

地方生活のイメージといえば、安くて広い家に、現地農家から買ってくる破格で美味しい野菜。市場で直接買う安くて新鮮な魚介類や、美味しい湧水。確かにこれらは地方での生活において、魅力の一部ではあります。では、本当に移住することで生活費全体が都心での生活よりも安くなるのでしょうか?

今回は地方移住で見落とされがちな「意外な出費」を中心とした、都心と地方の生活費の差をまとめました。
この記事を参考に、酸いも甘いも噛み分けて「想像通り」の地方移住を実現させましょう。

データでみる都会と地方の家賃の違いと補助金

それでは具体的にどのくらい安いのか、そして移住するとどのくらいの補助金がもらえるのかをみてみましょう。

家賃は東京都と比べて半額!?

総務省による「平成30年住宅・土地統計調査住宅及び世帯に関する基本集計」によると、平成30年の専用住宅(一戸建てやアパートなどを含む居住の目的で建てられた住宅)の「1畳当たり家賃・間代」をみると、東京都が5,128円で全国最高額。全国最安値は青森県で1,882円で、もう少し都心寄りの群馬県でも2,318円と、東京が群を抜いて家賃が高いことが見てとれます。

そして同調査の「1住宅当たり延べ面積」においては東京都が最下位の65.18㎡。そして上位1位は富山県の143.57㎡で、東京都の2倍以上の広さ。先ほどの1畳当たりの家賃において富山県は2,350円と、東京都の半額以下です。富山県の「雄大な立山連峰を望む広々とした家で、新鮮な魚介類が食卓に並ぶ日々」を想像するだけでもため息が出そうですよね。

移住支援金の対象者ならさらにお得

家賃が安いことに加え、移住支援金制度を取り入れている地方自治体もあり、さらにお得になる可能性があります。一例として、山梨県北杜市では移住支援金として単身世帯60万円、2人以上世帯100万円の補助金を支給しています*。

*移住直前の10年間のうち通算5年以上東京23区に在住歴や、マッチングサイト掲載の企業への就職などの条件があるので詳細は直接ご確認ください。
https://www.city.hokuto.yamanashi.jp/docs/10094.html

以上、今にでも移住したくなるような、メリット尽くしのデータではないでしょうか。ところが、、

移住で必要となる「車」を甘くみてはいけない

地方移住と切っても切れない物の一つは車ではないでしょうか。都心部で交通網が完備され、電車、バス、タクシーなどが充実した生活を送っていると「交通の便が悪い」状態がイメージし辛いですよね。

数分毎に電車がきて、どこでもタクシーがつかまる都心とは違い、地方では「電車やバスは1時間に一本」「最寄りの駅でも徒歩や自転車では行けない距離」「タクシーは前もって予約が必要」という状況が普通です。外出は「交通手段の確保」を軸にプランするのが地方生活の基本、と言っても過言ではありません。

地方は車社会って本当?データでみる実態

一般社団法人自動車検査登録情報協会の調べによると、平成31年3月末時点での「自家用乗用車の世帯当たりの普及台数」(保有台数÷世帯数)の都道府県別ランキング1位は福井県で1.736台、2位は富山県で1.681台、3位は山形県で1.671台。それに比べると都心部はランキングの下位を占め、45位が神奈川県の0.705台、46位が大阪府の0.645台、47位が東京都の0.432台でした。

平均的にみて都心部では車を持っていない世帯が多く、逆に地方では多くの世帯が1台以上車を所有しているということになります。地方で特に「僻地」ともなると、公共交通機関は途方もなく時間がかかり不便なことが一般的であり、移動手段として車を選択することは当然な流れといえます。そして、都心とは違い地方には大きな駐車場が併設された店舗や施設も多いため、車で外出がしやすく、子供や高齢者のいる家族には車があることが大きなメリットになります。

ただ、出費の面も考えると車を持つことは「良い点ばかり」という訳ではありません。

車の維持費には何がある?寒冷地は要注意

初めて車の購入を検討する際に見落とされがちなのが、その維持費ではないでしょうか。車購入代に始まり、ガソリン代、車検代、自動車税の他にも、JAF(一般社団法人日本自動車連盟)会費、ETC取り付け費、突発的な修理代など。地方とはいえど、家賃とは別に駐車場代がかかる共同住宅ももちろんありますし、日常的に車に乗る地方生活では、ガソリン代もかさみます。

そして、降雪地域ではスタッドレスタイヤや、その交換費・保管費も考える必要があります。路面の融雪剤の影響による車の下回りの錆びのケア代も、長く乗りたいなら捻出が必要です。その他降雪地帯の共同住宅では、冬の駐車場の除雪代も予算に入れておかなければなりません。

ちょっと車を走らせるだけで、雄大な山々を望みながら、澄んだ水の川辺でバーベキューができたり、また冬にはスノボ三昧などと魅力満載な地方ライフ。しかし、快適さを手に入れるには、比例して相応の出費が必要な部分もあるのが現実です。

車以外でも不意をつかれる生活上の出費が

新しい土地で生活する上で忘れてはいけないのが、移住前の水道光熱費の概算ではないでしょうか。「地方は物価が安い」と思われている中、都心部と地方のガス代の違いは意外な盲点かもしれません。

プロパンガスは都市ガスより高い?

都心部で主流の都市ガスは、ガス管を通して各家庭に供給されており、導管が通っていない傾向にある地方では普及率が低いのです。そのためガスボンベを使って離島や山間部にも配送できるプロパンガスが地方の家庭の主なエネルギー源になっています。

料金の設定に基準がある都市ガスとは違い、プロパンガスはガス会社によって自由な価格設定が可能で、内訳が不透明なことも。またガスボンベの輸送コストや人件費も加わるため、都市ガスよりも1.5〜2倍高額になる傾向にあります。

トータルで考えると「プラスマイナスゼロ」

上記の通り様々な費用を比べると、実は都心部と地方の生活費の差はほぼ「プラスマイナスゼロ」に近いのではないでしょうか。「都心より地方の方が生活費は安い」という考え方が一般的ですが、実は精査してみると、必ずしもそうだとは言い切れないことがわかります。

美しい自然、澄んだ空気、新鮮な野菜や魚介類、美味しい水、釣り、サーフィン、バイク、スキーなどの趣味に没頭できたり、地方生活の一番の魅力は「人生・生活の質」の向上という部分にあると言えます。

「お金」を中心に移住を考えた場合、後で迷いや悔いが出るかもしれません。そればかりではなく、大切にしている価値観や、実現したいライフスタイルにもフォーカスを当ててみてください。必ずしも安くないというデメリット、そして自己実現ができるというメリットを熟慮して移住生活を計画すると、理想に近い将来を手に入れられるはずです。

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